ニュースななめ読み『選択(選択出版)』『東洋経済(東洋経済新報社)』ほか

雑誌のニュース記事を読んだ感想をつらつらと書いています。

東大病院で手術の「練習台」にされた患者

妙なホラーより、はるかに背筋が寒くなる話である。

『選択』12月号(選択出版)が報じた、東大病院での手術死亡事故の隠蔽事件。カルテやX線写真の画像が散りばめられていて、非常にリアルな内容だ。

www.sentaku.co.jp事件は拡張型心筋症の治療のため入院していた患者に起きた。

東大病院の循環器内科の医師たちは、この患者に対して、今年4月に保険適用となったばかりの新たな医療機器を用いて手術を行った。

「マイトラクリップ手術」と呼ばれる方法は、しかし「心機能が低下した患者では、効果が期待できないばかりか、治療が命取りになる」という。患者は、この手術を適用してはいけないレベルの状況だった。

おまけに医師たちは未熟だった。カルテに記述が生々しい。

「何度通電しても穿刺(心臓に穴をあけるために針を刺すこと)できず」「可変式カテーテルなどを使用するも穿刺できず、これ以上の手技継続は合併症のリスクを考慮し、本日の手技中止とした」

つまり、何をやっても全然うまくいかず、「もう止めた」というわけだ。

関係者は「あれは手術ではなく『人体実験』の果てに引き起こされた人為的な事故だ」と語っている。

手術後が、またひどい。

カルテには、「術後胸部xp(X線写真)は特に問題なし」と記している。しかし記事に添えられたX線写真には、「気胸」つまり肺に穴があいて空気がもれていたり、血がたまったりしている状況が写し出されているのだ。専門医は「心房中隔を狙って打つべき電磁波を、心房壁の別の場所に向かって打ち、肺に穴を開けてしまったのだろう」と推察している。「そうであれば、まぎれもない医療ミスである」。

患者は手術後、わずか2週間ほどで死亡した。

遺族である母親に対する扱いが、またひどい。

病院側は、母親を「認知症」だと決めつけ、手術や死に至る経緯をロクに説明していない。そして、母親に解剖を諦めさせ、火葬してしまったのだ。「本人は認知症の診断は受けていない」と否定しているという。

さらに病院は、患者の死亡診断書でも隠蔽工作を働く。なんと死因のところには、「病死及び自然死」のところに丸をつけているのだ。「未婚独居」だった患者は、東大病院にとって好都合な存在だったのだろう。「失敗しても、文句を言ってくるのは母親くらい。なんとでも丸め込める」と。

記事の内容は、おそらく本当なのだろう。証拠がきちんと示されているからだ。

これは果たして医師、というか人間の所業なのだろうか。東大病院に入院してしまったばかりに、手術の実験台にされたあげく、闇に葬られてしまったーー。こんなことが許されていいのだろうか。

小池百合子の学歴詐称疑惑を追う作家

今やすっかり影が薄くなった東京都知事小池百合子

なのに、いまだにその学歴を疑問視し、追求し続ける人が相次ぐのは、ご本人の人柄のせいなのだろうか。

サンデー毎日11月25日号では、経済小説などを得意とする作家、黒木亮氏がアラビア語を学んだ立場から告発している。

サンデー毎日11月25日号は11月13日発売 | 毎日新聞出版

まず、黒木氏の学歴に驚く。「早稲田大学法学部時代の競走部に所属し、2年連続で箱根駅伝を走る」と略歴にある。文武両道ということか。卒業後、三和銀行に入った後は、カイロ・アメリカン大学に留学し、同大学院まで進み、修士号を取得したという。難解なるアラビア語を学ぶだけでも大変であろうに、修士号まで取ったというのだから、相当な秀才なのだろう。

努力の人ゆえに、卒業もしていないくせに「カイロ大学を首席で卒業」と喧伝する小池百合子がいよいよ許せないということのようだ。

そのツッコミは、専門的で激しい。

「小池氏のアラビア語を検証するにあたっては、氏が原稿を見ないで話している3つのインタビュー(ドバイの「アル・アーンTV」、エジプト国営衛星放送、クウェートの「チャンネル1」)の動画を見たが、『よい面会』を『美味しい面会』と言い違えるなど、短いインタビューの間に数多くの、しかも初歩的な間違いをしている」

このインタビューを一緒に見たエジプト人ジャーナリストは「これはストリート・アラビック。大学で学んだ人のアラビア語では絶対にない。日本で6か月やった程度のレベル」と評している。

なのに小池は、あったはずの卒論も出さず、ないはずの軍事訓練を受けたと主張し、首席で卒業したと今も言い張っているのだ。

小池が示す卒業証書にも、黒木氏の追求は容赦ない。一番笑えたのは「敬称に『サイイダ』(ミス)ではなく『サイイド』(ミスター)が、生年月日を示す『生まれ』にも『マウルーダ』(女性形)ではなく、『マウルード』(男性形)」というくだり。どうやら、男性の別人の卒業証書を拝借したようなのだ。黒木氏は「小池氏が卒業証明書だとしているものは、少なくとも私には、出来の悪い『玩具』にしか見えない」と斬って捨てている。

東京都知事という要職に、選挙で選ばれて就いている人だ。ここまで書かれては、きちんと反論しないわけにはいかないだろう。小池の学歴が本当だというのであれば、名誉棄損で裁判所に訴えてもおかしくない記事だろう。

いまだに小池の反論すら聞こえてこないところをみると、頬かむりで逃げるようだ。こんな程度の人を都知事に選んでしまった、都民の民度が問われる話だ。

 

「横田空域」空の占領地を問題にせぬ保守勢力

こんな不条理が、平気で許されていることに驚く。

敗戦から73年が経つというのに、いまだに日本の空は米国に「占領」されたままなのだ。

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横田空域というのは、東京都、栃木、群馬、埼玉、神奈川、新潟、山梨、長野、静岡各県に及ぶ、広大な空の空間のこと。「横田基地周辺の上空」ではない。『選択』の記事の挿絵をみると、その広さがよく分かる。

日本政府は、2020年の東京五輪までに、「都心の上空を飛行させる新ルート」を設定し、羽田空港発着の国際線の増便を実現させようと、米側に持ちかけた。ところが「管制権を持つ米側が横田空域の通過に合意していない」と報じられ、ニュースになった。

日本人の多くは、おそらく事の重大さを理解していないのだろう。

横田空域、というか日本領空は日本のものだ。管制権もなにも、日本の施政下にあらねばならないはず。なのに、米側が合意しないと、民間航空機を通過させられない領空が、日本には厳然と存在するのである。「空中の米軍基地」といえばよいだろうか。つまり、その空間は米国に占領されたままなのだ。

これ、沖縄の基地と変わりないではないか。なのになぜ、普天間辺野古だと延々ニュースが続くのに、広大な横田空域については、返還運動や報道が起きないのだろうか。なぜ、右翼も左翼も、もっと騒がないのだろうか。

安倍首相は、トランプ大統領と大の仲良しらしいが、横田空域の返還や利用に向けて、何か協議を進めているのだろうか。残念ながら、そんな話はついぞ聞かない。日頃、保守政治家であることを喧伝し、「日本を、取り戻す。」と勇ましい安倍さんだが、だったら取り戻してくれよ、といいたい。

羽田空港の国際便離発着が増えれば、便利になるし、経済にも良い効果が出るはずだ。なのに、米国におうかがいをたてて、かつ合意してももらえない。戦争に負けるとはこういうことなのかもしれないが、ドイツやイタリアは米国に「空」を献上したりはしていないという。やはり、日本だけがいまだに属国ということなのだろう。

日本の保守勢力というのも、何を守ろうとしているのか、よく分からない存在である。

 

二階幹事長と菅官房長官の「褒め合い」記事

気色悪い記事である。

週刊現代』11月10日号に出ていた「二階俊博×菅義偉 安倍政権のこれからを語る」という対談記事。政権の中枢にいる2人が、お互いを褒め合い、安倍首相も褒めちぎるという、実に権力べったりの記事だ。

司会の篠原文也氏が「まずはお互いの人物評を聞かせてください」と水を向けると、二階「一口に言って、大変な人格者」、菅「何を持っていっても面倒をみていただける」と相思相愛ぶりを強調。

安倍総理とはどういう政治家ですか」との問いかけには、菅「やはり、よく気配りをされる方ですよ」と応答。それは、いわゆる「お友だち」に対してだけではなかろうか?異論を唱える人に気配りするところは、残念ながら確認されていない。

そして二階「非常に柔軟だし、人の意見を聞くという姿勢を持っておられる」。なるほど、それは立派なことだが、安倍さん本人に中身がないから、人の言うことを聞く場面が多いのでは?と勘繰りたくもなる。

司会者もヨイショする。「ポスト安倍世論調査をやると菅さんの名前がよく出てくる。私は有力候補だと思います」と、質問ともつかないことを言い出している。

これを受けて二階「いいんじゃないですか。(語気を強めて)いいと思います」と菅を持ち上げる。菅の方は「私はまったくないですよ」と煙に巻いてはいるが。

やや本音かな、と思われたのは、菅の「私は幹事長と政局観がほとんど一緒なんですよね。だから幹事長とは何も相談する必要はない」というもの。政局観はともかくとして、結局のところ2人は最近、あまり相談はしていない、という間柄を示唆している。

司会者の最後のヨイショは笑えた。「私は(二階・菅は)政界の絶滅危惧種だと言っています(笑)」との言葉に、二階「なんで私が絶滅危惧種なんだ。私は絶滅なんかしませんから」と答えて記事は終わっている。冗談なのか、ムキになったのか。後者であれば、自らの老いと衰えゆえの焦りを感じているのだろう。

残念ながら、国民の一定数は、二階のような政治家には絶滅してほしいと考えているのではなかろうか。

 

天皇はなぜ靖国神社に参拝しないのか

長年の謎が解けるように感じた記事だ。

www.sentaku.co.jp『選択』(選択出版)11月号のこの記事を読むと、靖国神社の内部も結構荒んでいることが分かる。

記事の中心は、10月26日に、就任半年で更迭された小堀邦夫前宮司の暴言を巡る考察だが、それ以外も酷い話が並んでいる。

「賊軍側の総本家」から宮司に選ばれた徳川康久氏(15代将軍・慶喜のひ孫)が任期途中で退任に追い込まれた一因が、7月の「みたままつり」から露店を締め出したことだと指摘。テキヤ利権を守りたい反対派が退任に追い込んだというのだ。

ご存じのとおり、昨今のみたままつりは、不良どもが集まり、未成年飲酒やレイプまがいの乱行が繰り広げられる惨状。御霊を慰める場としては、全くふさわしくない「イベント」と化している。露店締め出しは、妥当な判断であろう。しかし反対派は、「羽目を外す無礼講が祭りの伝統だ」などと詭弁で抵抗。こんな乱れた神社には、天皇ならずとも参拝する気が失せようというものだ。

 

小堀前宮司の暴言も酷い。

「はっきり言えば、今上天皇靖国神社をつぶそうとしているんだよ」

「陛下が一生懸命、慰霊の旅をすればするほど靖国神社は遠ざかっていくんだよ」

こうした物言いを、記事は「天皇を逆恨みしている」と断じている。その通りだ。

天皇皇后は、国のために散華した戦没者に、静かな祈りを捧げつづけ、「忘れてはならない」との姿勢を国民に示したのだ。そうした「象徴天皇像」に対して、靖国は寄り添おうと努力をしてきたのか。むしろ、天皇のお気持ちを遠ざけることばかりしてきたのではないか。記事は、小泉純一郎が現職の首相として参拝を続けた時期を、「靖国はバブル人気に浮かれた」と一喝している。

靖国精神を理解しないにわか見物客を、支持者が増えたと勘違いした。安倍首相再登板で政権の後押しが得られると増長した。気がつけば天皇参拝中止は43年の長きに及ぶ」

つまり、靖国の独善が招いた自業自得の事態なのである。

その靖国は今、神社本庁を巻き込んで、盛んに人事抗争を繰り広げているという。

こうした体たらくを見せつけられて、「我こそは保守」という人たちはどう思っているのだろうか。言うまでもなく、靖国神社本庁は、政治団体神道政治連盟とも一蓮托生であり、政治との関係は濃密だ。本物の保守政治家、憂国の徒であれば、あるべき靖国に戻すべく、厳しい改革に乗り出すべきであろう。

そんな雰囲気はみじんもないところに、自称保守の人たちのいかがわしさが良く表れている。

なるほど納得「ケント・ギルバート現象」

会心の特集と言ってよいだろう。大変面白かった。

www.newsweekjapan.jp確かに書店や新聞広告でやたらと目につくケント・ギルバートの書籍。そのタイトルは、とにかくおどろおどろしい。「外人タレント」のハシリであって彼のイメージとは相当なギャップがある。なぜケントは突如、日本で右翼論客に変身したのか。

その答えが、徹底した取材で詳細に書かれている。

要するに、右翼ケント・ギルバートは、彼の回りの人間と出版社によって作り上げられたもの、ということだ。

流暢な日本語を話すとはいえ、米国人であるケントが、なぜにかくも多くの出版点数を世に送り出せるのか。記事では「制作ファクトリー」と呼んでいるスタッフ組織が、彼を支えているという。いや、支えているというより、実質は出版社の担当編集者と「日本人スタッフがほとんど作った」というから、やっぱりな、と納得がいく。

ケント自身で見いだしたにしては随分と凝った「陰謀論」が、講談社から堂々と出版されている点も、見事に突いている。『儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇』は51万部も売れたらしいが、中身は酷いようだ。1972年に「右派系の小新聞国民新聞』に全文が掲載された」という中国共産党の日本侵略計画文書「日本解放第二期工作要綱」なるものを、ケントは「ニセモノだとすると『出来過ぎ』です」と紹介しているそうだ。

筆者はケントに「文書の中国語原文は現在もなお見つかっていないんです」と質問したところ、声を立てて苦笑し「若干そういうものも入り込むよ。だから読者は、僕の書いたことをうのみにしなくてもいいの。これ(工作要綱)はスタッフが調べてきたんだ」と、あっけらかんと認めている。

おいおいおい。著者が、「それは僕が調べたものじゃない」と言ってしまったらおしまいではないか。「うのみにしなくていいの」と言ってしまったら、身も蓋もないではないか。

こんなバカげた書籍がバカ売れする理由を、記事は端的に記している。

「外タレ時代の知名度と『弁護士』の肩書 日本を褒めて中韓をたたく白人というキャラが出版社の戦略に合った」

そういうことなのだ。

そして、そうした出版物が、「書籍の購買習慣が強い中高年」に刺さり、飛ぶように売れる。売れるから、出版社はさらに過激なものを、と悪乗りしていく。今の出版社や編集者に「文化の担い手」「歴史の記録者」などという矜持は、全くないということだ。

これは間違いなく、出版人による自滅への道に他ならない。そのことを見事に活写して伝えた「ニューズウィーク」自体が滅ばないことを願うばかりである。

ウイグル人民族弾圧の壮絶

知ってはいたけど、ここまでとは、と驚かされた。

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ニューズウィーク10月23日号のウイグル弾圧に関する特集で、改めて実態を克明に伝えている「再教育という名の民族弾圧」を読んで、暗澹たる思いがした。

記事によると、「研究者らの推定では、既にウイグル人の成人人口の5~10%が罪状なしで(強制収容所)に収容されている」という。中国政府は、強制収容所ではなく「再教育施設」と呼ぶらしいが。

さらに「ある地区の警察関係者はアメリカの短波ラジオ放送「RFA」に対し、住民の40%を収容所に送ることになると述べた」というから、もはや隠し立てをするつもりもないようだ。「20~50歳の男性はほぼ全員が対象」だとするなら、もはや狂気の沙汰。ウイグル人社会は機能しなくなるではないか。

解放された人が「拷問に等しかった」という収容所はでは、共産党のスローガンの復唱や儒教の学習、食前の祈りに代えて習近平への感謝をささげることなどが強要されているという。人間の尊厳を踏みにじるこのような行為が、世界第2位の経済大国で堂々を行われていることに、吐き気をもよおす。

記事では、収容所の重要な役割として、「社会のある層の人々を丸ごと拘束する」という狙いがあるという。「少なくとも3つの県では、1980年から2000年の間に生まれたウイグル人のほぼ全てを『信用できない世代』として連行した」という報告があるという。法も正義もあったものではない。

さらに小見出しには「ナチス強制収容所以上」との一文が。「ウイグル人再教育施設の収容者数はナチス強制収容所における最大値ー(中略)1945年当時の収容者は71万4211人ーを上回っていた」というから、これは人類史上最悪の民族弾圧ということになる。

記事の筆者は、「ウイグル人全体が『改善不能』と見なされるかもしれない。(中略)つまり『民族浄化』も選択肢になるということだ」と結んでいる。アウシュビッツの再現が、現代で起ころうとしているのだ。それも日本のお隣で。

米中貿易戦争の影響で、習近平は今、日本との関係改善を渇望している。しかし、このような人権蹂躙に目をつぶって日本が中国と接近するならば、国の道義が疑われることになる。安倍首相の訪中は近いが、今、習近平に会うのなら、ウイグル人問題に必ず触れるべきであろう。保守政治家としての安倍さんの胆力が試される。