ニュースななめ読み『選択(選択出版)』『東洋経済(東洋経済新報社)』ほか

雑誌のニュース記事を読んだ感想をつらつらと書いています。

小池百合子「虚飾の履歴書」(文藝春秋7月号)

最近ではダントツで面白い調査報道記事であった。

「小池百合子さんはカイロ大学を卒業していません」と元同居女性が証言 | 文春オンライン

小池百合子の学歴が「カイロ大学首席卒業」なのかどうか。この疑惑を追及する雑誌記事などは、今までにも数多あった。この文藝春秋の記事は、その決定版といってよい。

なにせ、小池のカイロ時代、その一部始終を熟知するアパートの同居人女性が、取材に全面協力しているのだから。おそらくこの女性以上の証言者はいないだろう。

 

記事はとても抑制的であり、つとめてスキャンダラスな書きぶりを慎んでいる。が、行間から伝わってくるのは、小池が女を武器にして、様々なコネや便宜を得ていたのだな、ということだ。カイロ大学には、エジプト情報相のコネで、しかも2年次に編入。アパートには「日本の商社から派遣された語学研修性、新聞記者や大使館員、政府関係者、民間企業の駐在員」のような、日本人の男性たちが次々と訪れてきたという。「彼らは皆、小池に会いにやってくる」のであり、「男性たちが心を奪われて」いったのだそうだ。ただでさえ習得が難しいとされるアラビア語の勉学は、そっちのけだったようだ。

留学先で日本人とばかり交わる学生は、決して少なくない。が、その種の学生が、一国を代表する大学を首席で卒業するのは、おそらくありえないことだろう。小池はしかし、カイロ大学を(2年次に編入したのに!)4年で卒業、成績は1位、首席だったと、自著などで記している。

カイロから一時帰国して、来日したサダト大統領夫人のアテンド係を務めた小池は、時の人となってメディアでもてはやされたという。彼女を取り上げた記事には、「カイロ大学を卒業した小池百合子さん」とあって、ルームメイトの女性は驚いたという。「そういうことにしちゃったの?」との問いかけに、「うん」と答えた小池は、ケロッとしていたそうだ。嘘なんて朝飯前よ、と言われれば、彼女のこれまでの政治家としての歩みと、なるほど符合するので合点がいく。

 

女を武器にしながら、時に嘘も方便で、なんとしてでものし上がっていこうとする姿には、好感は全く持てないが、真似できない凄みは感じる。この記事は、良く書けた人間ドキュメンタリーである。

眉唾記事?「最優秀社長」(週刊ダイヤモンド6/23)

投資家必見と銘打たれた「最優秀社長」のランキングが、週刊ダイヤモンドで発表された。

この雑誌によると、1位は伊藤忠商事岡藤正弘会長(今はもう社長ではない)だそうだ。記事では、「決算情報では分からない真の実力値」とあるが、なんだそりゃ、と思うのは私だけだろうか。真の実力が分からない決算情報とはなんぞや、と突っ込みたくなる。

2位は日立製作所、3位は三井住友FG、4位ニトリで、5位はJXTGなんだそうな。大手企業を並べただけで、何の驚きもないメンツ。いや、もしかしたらダイヤモンド社への広告出稿量が決め手なのでは?と勘繰りたくもなるランキングではあるまいか。

伊藤忠に対しては、商社利益で1位になれば喝采し、3位に堕ちれば「決算情報では分からない」というカテゴリーで誉めそやす。どうやったって、徹頭徹尾礼賛するということのよう。出版不況を生き抜くには、ここまでやらないとダメなんだろうか。読者不在、という4文字が頭に浮かぶ。

投資家必見というよりも、企業広報必見に改めた方がよさそうだ。

 

製薬会社サバイバル(『週刊東洋経済』6月16日号)

なにやら製薬会社が大変らしい。

人口減少と薬価値下げ。このダブルパンチで、ドメスティックに稼いでいた製薬業界は、軒並み経営のピンチを迎えつつあるようだ。

週刊東洋経済』の大特集「製薬大再編」は、そんな業界の苦境ぶりをあれこれ書いている。中でも「アステラス製薬第一三共が統合する日」というのは、関係者にとってはショッキングなタイトルではないだろうか。ただ、中身はたいしてなく、アステラスと第一三共が化合物などをデータベース化することで提携している、というのがほとんど唯一の根拠。武田薬品の巨額M&Aの次は、両社の統合だ、と勢い込んでいるが、もう少しファクトが欲しいところだ。

この大特集で完全に欠落している視点がある。

『選択』6月号が大きく打った「製薬業界と大学教授『果てなき癒着』」という記事。2016年の1年間に、製薬業界から国立大学の医学部教授に支払われた講師謝礼や原稿執筆料などの金額を、企業別と個人別で詳細に調べ上げて、主なところを実名で紹介している。第一三共は、20億円以上も医師にアルバイト料を払っていた。アステラスは8.4億円。経営が苦しい割には、ずいぶんと大盤振る舞いをするものだ。

記事によると、自社の薬と関係のある医師におカネをつぎ込み、講演や原稿で宣伝してもらわないと、薬が売れないからだそうだ。贈収賄とは言えないまでも、極めてグレーな関係であることは間違いない。

2016年、製薬業界が医師に支払った謝礼金などは、総額249億円にものぼるそうだ。業界全体の腐敗が止まる気配はない。

NHKが「安倍ベッタリ路線」と決別?

日本相撲協会評議員会議長に、海老沢勝二氏が就任するという。いわずと知れた元NHK会長、「エビジョンイル」と呼ばれた男だ。

「みなさまのNHK」で権力の中枢を占めているのは、海老沢氏のような、報道局政治部出身者だといわれる。それが最近、「報道クーデター」が静かに進行中、と報じているのが『選択』6月号「NHKが『安倍ベッタリ路線』と決別」の記事だ。

これまた悪名が高かった「モミジョンイル」こと籾井勝人前会長の時代は、「安倍さまのNHK」と呼ばれるほど、NHKは安倍政権に配慮し、忖度していた。「モリ・カケ」疑惑がどれほど高まろうと、夜7時や9時のニュースでは、後の方で短く伝えるだけだった。

それが確かに、最近は政権の疑惑追及で特ダネをポンポン飛ばすようになってきた。NHKは何で急に変わったのだろうか、と不思議だったが、記事を読んで得心した。今の上田良一会長に影響を及ぼしているのが、報道局の社会部人脈だというのだ。

言われてみれば、「安倍べったり記者」の女王である岩田明子記者が、ニュース番組から姿を消したのと、時期的にも符合する。

「モリ・カケ」で一時ぐらついた安倍政権だが、新潟県知事選挙で勝利をおさめ、いまや通常国会の会期延長を図るほど、すっかり余裕が出てきた。NHK社会部は「倒閣」へ追い込めると意気込んだのかもしれないが、目論見は外れてしまった。今後、官邸が「報復」に出るかもしれない。記事は、自民党総裁選後の「上田会長交代論」を予測している。

正しい先読み「米朝会談 失敗の歴史」

6月12日の米朝会談前に発行された雑誌として、『ニューズウィーク』の特集「米朝会談 失敗の歴史」が、なかなか読みごたえがあった。

トップは、東京新聞論説委員の五味洋治氏の記事。「不信と裏切りの米朝交渉30年史」というタイトルだが、これこそトランプに読ませてあげたい内容であった。目新しいというわけではないのだが、融和と対立を繰り返した米朝関係を丁寧に振り返っている。そして、これからも米朝は接近と裏切りを繰り返していくのだろう、という推論が容易に立つ指摘が多かった。

記事の核心は、北朝鮮には核を放棄する意思は全くない、ということ。北朝鮮の外交官は「国家主権を守る唯一の道は核保有だけ」と、公に何度も発言していることを紹介し、北朝鮮は核を手放すことを「自殺行為」と考えている、と論じている。

全くその通りなのだろう。

米朝の合意文書の中で、「完全で検証可能かつ不可逆的な非核化」(CVID)という言葉が使われなかったことは、金正恩にとって最大の成果。これからも、非核化詐欺を続けながら、コツコツと核戦力を強化していくに違いない。カネだけ払わされる日韓にしてみれば、いい面の皮である。

企業研究 文藝春秋 『選択』6月号(選択出版)

サブタイトルに「名門出版社の俗悪すぎる『お家騒動』」とあるから、おだやかではない。

文藝春秋といえば、かの「文春砲」で数多の有名人、政治家のスキャンダルを暴いてきた出版社だ。それがブーメランのごとく、自らにも返ってきたというのか。

 

『選択』の記事によると、現社長が退任して、同社では初となる「会長職」に就き、後任の社長には、編集経験のない経理畑の人物を据えることを画策したのだとか。

同社の社長は、『週刊文春』と『文藝春秋』の両方の編集長経験者が就く慣例となってきた。これを思いっきりひっくり返して、本や雑誌を作ったことがない人物を社長にしようというのだから、前任者になにがしかの意図があるとみて間違いないだろう。記事では現社長による「院政」が目的、と書かれている。

これが本当であれば、文藝春秋もまた、自らが叩きのめしてきた東芝やフジテレビなどと変わりのない会社ということになり、今後は醜悪な院政を敷く組織に対して、筆を振るえなくなってしまうのではないか。

 

記事ではさらに、現社長の愛人問題や、社員の急死や労災などを伴う同社の労務問題についても言及している。

文藝春秋の今般の内紛劇に関して、ここまで詳しく書かれた記事は他にないので、興味はつきなかった。

「アイドル」金正恩

 最近、金正恩委員長の露出が多い。3月末の北京電撃訪問が外交デビューだったが、それまで引きこもっていたのがウソのようだ。

 4月に北朝鮮国内で中国人観光客を乗せたバス事故が発生、金正恩委員長は負傷した中国人を自ら見舞ったばかりか、帰国する彼らを平壌駅まで「お見送り」に出かけて様々な憶測を呼んだ。

 しかし、北京訪問と4月の南北首脳会談を除いた2回の会談を見るに、単にフットワークが軽いのではないか。

 大連での会談は「米国からポンペオが来るから、習近平主席と相談したい」ということだろうし、2回目の南北会談は「トランプ大統領米朝会談を中止すると言い出したので、明日板門店ででも会って話せないか」ということなようだ。「首脳会談」といえば儀礼的なものなのが一般的だが、どうも金正恩委員長は「本当に話す用を足しに行っている」感がある。

 事前にリハーサルまでやっていた4月の南北会談と比べて、あまりにも落差が大きい。文在寅大統領はどんな顔をしたのだろう。

 拉致問題について金正恩委員長は「なぜ日本は直接言ってこないのか」とコメントしたと伝えられ、「日本は交渉チャネルがないのか」と話題になったが、もしかすると「用があるなら、どうして安倍は平壌に来ないのか、なんなら呼ばれれば東京に行ってもいい」くらいの意味なのかも知れない。

 対内的には個人崇拝をさせる特異な指導者だが、対外的にも偶像(アイドル)としての自身の価値を強く意識しているが故に、気軽に舞台の上へとあがっているのだろうか。

 ともかく、最近の外交はとくに属人的で、みていて飽きない。