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みずほ銀行システム統合『選択』(選択出版)

「徹夜や休日出勤は当たり前。毎月数人がうつ病やノイローゼでプロジェクトから抜けていく。中には突然イスから立ち上がるや、『お前らよくこんな仕事やってられるな!』と叫んでドアを蹴って部屋を出ていき、それっきり出勤してこなかった奴もいた。プロジェクトマネジャーは無論のこと、メンバーは皆、疲弊し切っている」(『選択』2016年7月号 選択出版)
 まさに絵にかいたようなデスマーチぶりで話題になった、みずほ銀行のシステム更新。「二十万人/月」という、「古代エジプトにおけるクフ王のピラミッド建設にも匹敵」するという桁外れの工数にも、爆笑させていただいた。みずほでシステム障害が発生すれば自分も困るのだが、それでもやはり面白い。
 そう感じたのは私の性格が特別悪いというわけでもないようで、ネット上では「現代のサグラダファミリア」の異名をつけられたり、ここまで企業のシステムなんぞが注目されたことはないだろう。
 その後のニュースに注目していたが、今月、ついにみずほ銀行の佐藤社長が決算報告で、「ようやく完了がみえてきた」と発言した。
 正直なところ、少し残念な気がしないでもないが、まだ油断はできない。組み上がったものがしっかり動くかが、本番である。あわててバグを見逃した日には、目も当てられない。
 早ければ2018年にも運用開始とのことだが、ネットでからかわれるのを、ぐっと我慢していただきたい。

『選択』2016年7月号(選択出版)

東京ガス『選択』5月号(選択出版)

ニチガスニスルーノ・三世」とかいうダジャレをキャラ名にしたCMをたまに目にするが、どうも「ガス小売自由化」というのを身近に感じない。
 第一、「日本瓦斯」という会社を初めて聞いた。プロパンガス会社のようだが、どうもプロパンというと、田舎の無闇に高いガス、というイメージで、なんだか胡散臭い。
 電力の小売自由化のほうがまだしも、通信キャリアが参入しているだけ、実感がある。
『選択』5月号(選択出版)では、ガス自由化「抹殺」した東京ガスという題がつけられていた。
「関東でせいぜい一千人に一人しか都市ガスの契約先を切り替えようとしていないのは、ひとえに魅力的な新規参入者がいないからだ」とは、実にごもっとも。東電は7月から参入と完全に出遅れ。
 しかし、そもそも、関東圏で都市ガスを売るには、東ガスか東電からガスを買うしかなく、公平な競争もなにもあったものではないというのには、呆れた。
 電力小売り自由化では、東電が分社化されるなどの大ナタが振るわれた一方で、あまりにもヤル気がなさすぎる。記事にあるように、東京ガスによる、政治力の勝負と考えるべきなのだろうか。


ガス自由化「抹殺」した東京ガス

競争なき「首都圏独占」継続で高笑い

『選択』5月号(選択出版)

国立大学「地元就職率向上」ノルマ『週刊ダイヤモンド』5/20号(ダイヤモンド社

 大学改革と言えば、文系学部不要論だの、益体もない話ばかり出てくるイメージがある。『週刊ダイヤモンド』5/20号(ダイヤモンド社)によれば、昨年度から既に国立大学には「地元就職率向上」がノルマとして国から課されているらしい。記事の冒頭、「ああばかばかしい」という地方国立大学教員の声が紹介されているが、読み進めていくにつれ、「やはりアホ臭いことをしているのだな」と感心した。
 いくらアホ臭くても、運営費交付金の額に関わってくるのだから、就職支援課はアホ臭いことに真面目に取り組まざるを得ない。その結果、学生からは「地元就職希望だと手厚くサポートしてくれたのに、都市部希望に切り替えたら、途端に対応が悪くなった」との声が上がっているようだ。気の毒な話である。
「地方創生」の掛け声のもと、都会の若者を田舎へ送るのは毛沢東でもあるまいし無理として、地方からは極力外へ出さない方向で努力せよ、こういうことだろう。
 中国ですら農業戸籍廃止に向けて動いているこのご時世に、ナンセンス極まる。
 ただでさえ地方の大学生は、就職活動の負担が大きい。東京に本社がある大企業の説明会や面接は、さすがに大阪ではやるとしても、札幌や福岡で開催するのは少数派らしい。説明会に出るための交通費、宿泊費などだけでも、馬鹿にならない負担だ。
 これにもまして、大学の就職課が都市部就職希望の学生を冷遇するとなれば、要は「地方の大学に入ると就活が大変」という現状に拍車がかかる。
 実際、私が高校生の頃にも、「難地方国立よりは大都市の私大に行け、でないと就活で死ぬ」と言われていた。
 結果として、地方国立の人気がどんどん下がるだけなのではないか。
 

国立大学改革の評価指標
「地元就職向上」に現場の不満
週刊ダイヤモンド』5/20号(ダイヤモンド社

リコー『選択』5月号(選択出版)

『選択』(選択出版)でキヤノンニコンと光学機器メーカーについて報じられていたが、『選択』5月号(選択出版)では「黄昏リコーの哀れな末路」という題で、リコー記事がとりあげられていた。

「カネなし、技術なし、活気なし」と、どうしようもないとは正にこのこと。主力のオフィス機器市場が、絶望的らしい。なるほど、最近ペーパーレスだとかで、配布資料を紙で配らずタブレットPCなどで見させる企業もあるようだが、ああいった取組はリコーの首を絞めているようなものか。
 リコーに比べれば、キヤノンは一眼レフでシェアを握っているうえ、東芝メディカル買収など「それなりに手は打っている」と言えるそうだ。

 デジタルカメラについての言及は、THETAについて少し触れたくらいだったが、そもそもシェアもロクに取れていないので、当然か。街でカメラを持った人を見ると、必ずメーカーをチェックしているが、ペンタックスの一眼レフを持った観光客も稀にいて、「中国にもペンタファンがいるのか」と感心する。中には、キヤノンとペンタ、二台肩から下げて歩く、意識の高いやつもいる。
ペンタックス」で検索しようとしたら、関連で「ミラーレス」が出てきたので、「はてな」と思ったら、Qシリーズだった。なるほど、言われてみれば、あれもミラーレス一眼には違いない。自分の頭の中では、「レンズ交換式コンデジ」だったのでピンとこなかった。
 こういうとQシリーズを馬鹿にしているようだが、あれはあれで完成された、遊び心のあるいい商品だと思う。ちょくちょく持っている人を見かけるが、決まって若い女性なので、まさに「女子カメラ」という狙い通り、マーケティングはかなり成功しているのではないか。
 そもそも、カメラという商品自体がニッチと言ってしまえばそれまで、とても利益が出るとは思えないが。何故、100億も出して買ってしまったのだろうか。
 さすがに今更カメラ部門は、サムスンも昨年あっさり撤退したぐらいでもあるし、いくらカネが余っている中国企業でも買わない気がする。

『選択』5月号(選択出版)

生き残りをかけた北朝鮮のロジック『ニューズウィーク』5/16号(CCCメディアハウス)

 近年はそこそこの経済成長をしているものの、依然としてやはり貧困国には違いない北朝鮮については、「何故中国のように改革開放しないのか」との疑問がつきまとう。中国の新聞論説文や、シンクタンクのレポートを見ても、北朝鮮の経済政策への評価は「教条主義的」、甚だしくは「無能」との字句が並ぶ。中国との国境付近の住民は、夜、煌々と光を放つ鴨緑江の対岸を見て、何を思うのだろうか。

ニューズウィーク』5/16号(CCCメディアハウス)に、金日成総合大学への留学経験もあるロシア出身の北朝鮮専門家、アンドレイ・ランコフ氏による「生き残りを賭けた金正恩のロジック」との記事が掲載されていた。

 それによれば、北朝鮮の経済改革にとって最大の障壁は、韓国との圧倒的な所得格差であるという。「安価な労働力を提供すればいいのでは」と思いつつ読み進めると、どうやら問題は、信じがたいほど豊かで、政治的にも自由な韓国の人々の暮らしぶりが知られることにあるようだ。

「人々はあらゆる問題を一夜で解決する方法として、韓国主導での南北統一を求めるだろう」

 なるほど。確かに、朝鮮労働党にやらせておくよりも、大韓民国の国民になった方が話は早い。非常に当たり前の結論である、何故気づかなかった。ランコフ氏は、中国の場合、台湾は小さすぎて体制転覆の脅威にならず、その点恵まれていたと指摘する。

 しかし、経済改革が今のように漸進的にしか進められていない原因が、かくも当然の理由によるのならば、それこそ北朝鮮の経済が成長することは、可能なのだろうか。

 トランプ大統領は、核兵器とミサイルの開発を放棄すれば、金正恩委員長をワシントンへ迎え、北朝鮮と共存の道を選ぶ用意がある旨、中国を通じて伝えたらしい。

 中国としては、経済援助や国交正常化などの前向きな提案も北朝鮮に伝えるよう、アメリカへ働きかけているらしい。

経済改革が進まない理由を考えると、もし米朝国交正常化が実現したとしても、どうやら北朝鮮に漢江の奇跡ならぬ「大同江の奇跡」はなさそうだ。

 

ニューズウィーク』5/16号(CCCメディアハウス)

国際医療福祉大学『選択』5月号(選択出版)

『選択』5月号(選択出版)の〈日本のサンクチュアリ〉は、一部で「第三の森友」と噂されている、国際医療福祉大学だった。読んでみると、理事長の高木邦格氏というのは、「こんにゃく」を渡した渡さないでもめたり、忖度がどうなどと云々するような、マヌケなオッサンではないらしい。

 福岡県は大川市という、今では鉄道駅もない小都市で眼科医院の家に生まれ、そこから天下の慶應に比肩する偏差値の、最難関医学部を作り上げた。銅像の二つや三つ建ちそうな話である。

 成功談は、さる大物政治家との邂逅に始まる。そこから、補助金は引っ張って来るわ、東京の名門病院を買収するわ、国家戦略特区事業をでっちあげて助成金をせしめるわの大活躍。

医は仁術ならぬ「医は算術」との使い古された揶揄もあるが、これはもう医者にしておくのがもったいない。一貫して臨床ではなく病院経営に携わった経歴については、この逸材をあたら埋もれさせることにならず、幸いであったと思う。

 官僚の天下りをじゃんじゃん受け入れるのは勿論、マスコミOBもどんどん取り込んで提灯記事を書かせたりと、実に芸が細かい。善玉か悪玉かでいえば間違いなく「悪玉」に分類されるべき高木邦格理事長だが、ここまでくれば感服せざるをえない。下手をすれば、日本の医学界に貢献した人物との評価が与えられかねない。

 医学部新設の野望が成就し、次にこの妖怪じみた「政商」が目指すところは何処だろうか。

 

『選択』5月号(選択出版)

すでに崩壊は始まっている「金王朝」『新潮45』5月号(新潮社)


 北朝鮮の政権についての記事は、大抵が「崩壊間近」ということになっている。昔は金日成主席が死ねば崩壊すると言われていたようだが、それどころか金正日将軍が死んで7年になる今に至るまで、金氏朝鮮はなんだかんだ続いている。
新潮45』5月号(新潮社)の特集「朝鮮半島炎上」に、龍谷大学・李相哲教授の金正恩政権レポートが掲載されていた。
 いわゆる「白頭血統」をはじめとした宮廷劇についての解説で、北朝鮮ものの長めの記事といえば、あとは軍事ものと相場は決まっている。相次ぐ粛清、正恩による独裁、国中に張り巡らされた秘密警察網についての近況が知らされ、これはこれで面白いのだが、これで北朝鮮がわかるのかと言えば、かなり疑問がある。
 例えば、先の大戦時の日本を説明する場合、軍閥や重臣、憲兵特高警察を中心として、「かくて敗戦したのだ」ストーリーを作った場合(昔、かなり作られたが)とする。「なぜ反戦運動や革命によって内部崩壊しなかったのか」という質問に対し、「言論統制憲兵特高警察が厳しかったから」と結論づけるのは、あまりにも粗雑、不正解だろう。国家からムラ社会、家族共同体までを貫通する統治体制や、その中で生活する普通の人々が描かれなければ、「大日本帝国」は見えてこない。
 あまりにも閉鎖的すぎる国のため、亡命者による反共プロパガンダじみた(その事実性は必ずしも否定しないが、それのみを見ていたのでは、何故あの政権がまだ存在するのか理解できない)情報以外なかなか伝わってこないが、北朝鮮の統治システムが人々の中でどう作用し、市井の人がどのように生活をしているのかが知りたい。
 曲がりなりにも三代続いている政権なのだから、それなりに「社会」は確たるものとして存在するはずだ。

 

新潮45』5月号(新潮社)