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すでに崩壊は始まっている「金王朝」『新潮45』5月号(新潮社)


 北朝鮮の政権についての記事は、大抵が「崩壊間近」ということになっている。昔は金日成主席が死ねば崩壊すると言われていたようだが、それどころか金正日将軍が死んで7年になる今に至るまで、金氏朝鮮はなんだかんだ続いている。
新潮45』5月号(新潮社)の特集「朝鮮半島炎上」に、龍谷大学・李相哲教授の金正恩政権レポートが掲載されていた。
 いわゆる「白頭血統」をはじめとした宮廷劇についての解説で、北朝鮮ものの長めの記事といえば、あとは軍事ものと相場は決まっている。相次ぐ粛清、正恩による独裁、国中に張り巡らされた秘密警察網についての近況が知らされ、これはこれで面白いのだが、これで北朝鮮がわかるのかと言えば、かなり疑問がある。
 例えば、先の大戦時の日本を説明する場合、軍閥や重臣、憲兵特高警察を中心として、「かくて敗戦したのだ」ストーリーを作った場合(昔、かなり作られたが)とする。「なぜ反戦運動や革命によって内部崩壊しなかったのか」という質問に対し、「言論統制憲兵特高警察が厳しかったから」と結論づけるのは、あまりにも粗雑、不正解だろう。国家からムラ社会、家族共同体までを貫通する統治体制や、その中で生活する普通の人々が描かれなければ、「大日本帝国」は見えてこない。
 あまりにも閉鎖的すぎる国のため、亡命者による反共プロパガンダじみた(その事実性は必ずしも否定しないが、それのみを見ていたのでは、何故あの政権がまだ存在するのか理解できない)情報以外なかなか伝わってこないが、北朝鮮の統治システムが人々の中でどう作用し、市井の人がどのように生活をしているのかが知りたい。
 曲がりなりにも三代続いている政権なのだから、それなりに「社会」は確たるものとして存在するはずだ。

 

新潮45』5月号(新潮社)